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綺麗なもの
太陽の光がキラキラと降り注ぐ明るい自室で、ウィンリィは頭を抱えていた。
その手元には、刺繍や染め付けがなされた色とりどりの生地が、いくつも広げられている。
一つ一つ、彼女は確かめるようにそれらを見やる。
だが、悩みは解決しないようで、ウィンリィはうーん、とまた頭を抱えた。
そんな彼女の様子を察したかのように、傍らに控えた従者は口を挟む。
「どうなさいました、お嬢様」
「んー……どれもよく見えるのよ」
だから選べなくて、とウィンリィが続けると青年はそれは困りましたねと眉を下げてみせた。
本当にそうだわ、と彼女は思う。
普段、新しいドレスを仕立てる時はここまで迷いはしないのに。
「確かにこれだけあると悩みますね」
彼の同意を聞きながら、彼女は再認識する。
やはりこれは悩ましい問題だと。
なんといってもただのドレスではない。
ウィンリィにとっては、特別なものである。
社交界へ初めて足を踏み入れる、その時のためのドレスにこだわらない貴族の娘はいないからだ。 彼女は、並べられた生地の一つを手に取って、じっと見た。
滑らかな肌ざわりのそれは、薄い桃色と花の刺繍が愛らしい。
きっと仕立てたら可愛いらしいドレスになるだろう。
だが、すぐにそれを元の場所に戻した。
今度は、深緑を思わせる生地を手に取ってみる。
これなら落ち着いた女性という印象を見る人に与えるだろう。
しかしやはりそれも戻す。
先程から、こんなことの繰り返しだ。どれもよく見えて、仕方がない。
しかし、選ばなくてはいけないのだ。
今日生地を決めなければ、夜会には間に合わない。
やっと社交界に出てもよいという許可を祖母からもらったのだ。
憧れだった淑女への仲間入りが出来るその時を逃したくはない。
ふう、と息を吐いて、彼女はまた生地に向き合った。
まだ見ていない生地を一枚一枚手に取る。
そんななんとも真剣な様子に、青年は思わず苦笑を浮かべた。
お嬢様なら、どれを着たところで社交界の花になれるというのに。
そんなことを考えたからだ。
しかし、彼の主人はやはりうんうんと悩んでいる。
「きっと、どれもよくお似合いになられますよ」
彼は思ったことを口にする。
しかしそれはかの主人には聞こえてはいないようで、返ってきたのはうん、という心そちらにはあらずといった具合だった。
それにまた苦笑を浮かべる。
なんというか、かわいらしい悩みというか。
放っておいたら、このまま考え続けるかもしれない。
しかしながら、口出しをする気は青年には毛頭なかった。
彼の意見に意見を仰ぐことはあるけれども、意外に頑固な主人のことだ。
自身が納得しなければ良しを出さないだろう。
いや、そうでなければ意味がない。
だから口は出さない。彼女から、それを求められるまでは。
主人の意見を尊重することが、使用人として一番大事なことなのだ。
「エド」
呼び掛けられた声に、エドワードは答える。
何でしょうかお嬢様。主人は、水色の生地を手に彼を仰ぎ見ていた。
「これ、どうかな」
その問いに、微笑する。これなら夜会には間に合うだろう。
きっとよくお似合いになられますよ。
穏やかな口調で、彼は答える。
初夏の光に包まれた主人は、それを見て満足したようににっこりと笑った。
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お嬢様が年頃になっても過保護な従者。
このシリーズは、どれだけ二人を気持ち悪く書くかに重点を置いております(おい)
この続きっぽい話を拍手で現在公開中。
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