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happy sunday
「……い、……おい……ねの?………鋼の!」
「んぁ?」
春が通り過ぎ、暖かいというよりは少し暑いと表現するのが的確なアメストリス国の首都セントラル。
窓からこぼれ落ちる日差しを受けながらぼんやりと考えごとをしていたエドワードは、聞こえてきた声にはたと我に返った。
同時に、後ろに立つ声の主に視線をやる。
「……なんか用?」
「いや、鍋が凄いことになっているんだが、いいのか?」
「鍋?………うぉッ!?」
云われて視線をやると、火にかけていた鍋が黒々と煙を立てている。
エドワードは慌てて火を消して、鍋の中を覗き込んでみるが期待とは裏腹に、
昼飯になる予定だったシチューはとても食べれそうにないほど黒焦げだ。
「あ゛〜………くそ!」
ほんの少し煮詰めるだけだったのに。これでは始めっからやり直した。
面倒この上ないとはまさしくこんな事を言うのだろう。
普段のエドワードなら、こんな凡ミスをするはずがないのに、してしまったというのはやはり、
普段しないような慣れない考え事をしていたせいとしか思えない。
「どうした、先程からぼんやりして。どこか具合でも悪いのか?」
「な、なんでもねぇよ。ちょっと考え事してただけだって!」
「考え事?」
「………あ」
うっかり口に出してから、エドワードはしまったと顔を歪めた。
一番知られてはいけないヤツにバラしそうになるとは、不用心すぎる。
弟にもよく言われるが、どうしてこうも自分は迂闊なんだろうか。
「べ、別にたいしたことじゃねぇって!アンタが気にするようなことじゃないからさ!!」
変に勘ぐられて墓穴を掘る前にフォローしておこうと思い、必死でエドワードはまくしたてる。
この考え事の内容をコイツに知られるわけにはいかないからだ。
何故なら、今エドワードの頭を埋め尽くしている考え事というのは目の前、
もとい自分の横に立っている「ロイ・マスタング」その人についてのことであるからだ。
ロイは、三十に手が届くほどの年令であるがよく整った顔立ちと、顔にかかる黒髪のおかげで実際より若くみられる事が多い青年である。
だが、若くしてアメストリス国軍大佐の地位を得たエリートという一面をもっていた。
そんなロイとエドワードの出会いは今から数年前に遡る。死んでしまった母にもう一度会いたい一心で、
錬金術の禁忌とされる人体錬成にエドワードと弟のアルフォンスが挑んだ結果、錬成は失敗し、エドワードは右手と左足を、
アルフォンスは体全部を失ってしまった。
絶望に沈むエドワードに国家錬金術師になるという希望を指し示したのが、ほかならぬロイであった。
それから数年。長い旅路の果てにエドワードとアルフォンスはやっと元の体に戻ることができた。
国家資格を返上しにいったエドワードにロイが告げたのは『これからは自分のそばにいてくれないか』という懇願(もといプロポーズ)。
しょうがねぇヤローだなとエドワードが(あくまでも)しぶしぶその申し出を受けてロイのアパートにやってきたのはほんの数日前で、
今日は二人で暮らすようななってから初めての休日である。
「何をそんなに慌てている。どうせ私のことを考えていたんだろう?」
「はぁッ!?」
笑いながら告げられた言葉に反応して、エドワードは反射的にロイを睨みつける。
「違うのか?」
「………自惚れすぎだっつーの」
ずはり言い当てられたことに若干どころかかなりの悔しさを覚えながらも、
赤くなった頬を隠すために焦がしてしまった鍋の方に体を戻す。
そしてそのまま鍋を水に浸けようと流しに運ぶ。
はやく洗わないと焦げ付きは取りにくくなってしまうのだ。
「否定しない、ということはやはり私のことを考えていたんだな?」
必死に鍋をスポンジで擦るエドワードの背後から、楽しそうな声が振ってくる。
確かに間違いではないが、多少のムカつきを覚えるのはつまり、
『人が必死こいてる時に手伝いもせずに何してやがるこのヤローッ!』ということだ。
「バカなこと言ってんじゃ……」
手にしたスポンジをロイの顔めがけて投げ付けようとしたエドワードの腕は、あっさりとつかまれた。
「なッ!?」
「……鋼の」
そしてそのまま、後ろからするりと腰に回った手によって体を引き寄せられた。
背後から密着する体温に、不覚にも心臓が跳ね上がる。
「は、放せッ!」
「ダメだ。放さない」
「……ッ…ふざけッ!!」
「私のことを考えていた、と認めるまでは放さない」
「はぁぁあ!?」
耳元で囁かれた言葉は横暴としかいえない。ってか自意識過剰だ。
どうにかして腕から逃れようと暴れるエドワードは、不意に首筋におりてくる唇の感触にびくりと震えた。
「いっ!?」
「…放さない、と言っているだろう?」
だが、こんなことをされてすぐに陥落するエドワードではない。
ギロリとロイを睨み付けるとまた暴れ始めた。
だがロイの方も手慣れたもので、エドワードの攻撃を避けながら合間に彼の首やら頬やらに唇を落としてくる。
「……なんでンなことわかるんだよ……」
数分間そんな攻防が続いたであろうか。すっかり疲れ果てたエドワードは、思わずポツリとつぶやいた。
言った後しまったと口を塞いでもソレは後の祭りというやつで。
言われた方はというと、してやったりな笑顔(エセ臭さ120%)を浮かべている。
悔しさにエドワードが赤く染まった顔をしかめていると、耳元にロイの声が響いてきた。
「……私もだからさ」
「な、何が!」
言葉の意味と、いつもより静かな声色の意味がわからなくて、エドワードはロイの顔を思わず見上げた。
その顔は、さっきまでのうさん臭さ炸裂の笑顔ではなくて、ひたむきな眼差しがただただ自分をとらえている。
目を逸らせずにいると、ロイの唇がゆっくりと動きだして言葉を紡いだ。
「私も、君のことばかり考えているということさ」
「な、何をバカなこと……」
これだからコイツはヤなヤツなんだ、とエドワードは胸中で毒づいた。
口説き文句としか思えない、むしろ日常では絶対に聞くことのないような台詞を恥ずかしげもなく口にするロイに、
自分は幾度こうやって赤面させられたことだろう。
数有るロイの欠点の中でこれが一番エドワードにとって迷惑極まりなかった。
とはいえ、それよりも迷惑なのは、そんな言葉を笑い飛ばすこともできず、いちいち反応してしまう自身の心だ。
「鋼の……」
赤くなった顔をみられまいと、そっぽを向いたエドワードの顎に、そっと手が添えられる。
腕による拘束はもはやすぐに解けるほどでしかなかったが、それから逃れることはエドワードにはできなかった。
添えられた手の意味を理解して、ぎゅっと目をつぶる。
いつも強引で、意味わかんなくて、だけど暖かくて優しいロイを拒絶することなんて本気でできないことを知っているから。
―――なんで、いっつも流されちまうんだ
いつも通り強引で、だけど優しいキスの間。
ほんの少しだけ残った冷静に働く頭の中で、エドワードはぼんやりと先程の考え事の続きをめぐらせていた。
夏休みに暇を持て余して書いたもの。
だったら素直に本命カプ(503)書いてろよ!!と自分でツッコミたい。
つーか甘くてキモイよ!すっげぇキモイ!!
ちなみに元ネタが存在します。わかった人はご一報を(笑)
元ネタは『純愛ロマンチカ』ですよ(笑)
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