|
リゼンブール王国物語
今日は姫様のお誕生日。
リゼンブールのお城では盛大にそれをお祝いする舞踏会が開かれることになっています。
そしてここ、謁見の間ではちょうど騎士団長が朝の挨拶を女王陛下と姫様にしているようですが………
「……の警備はこのように行う予定です」
「あぁ、そんなものでいいだろう。しっかり頼むと兵士達に伝えておくれ」
「御意。それでは私はこれで……と、姫様」
いきなり騎士団長に呼ばれた姫様は驚きました。
なぜなら謁見の間で彼が姫様を呼ぶことなどいままでにはなかったからです。
「な、なんでしょうか、エドワード?」
「……この良き日を迎えられたこと、心よりお祝い申し上げます」
「……ありがとう」
すっと立ち上がって部屋から去っていく騎士団長の背中を見つつ、姫様はちょっと不満でした。
もちろんお祝いの言葉がうれしくないわけではないのです。
ですが………
「……何もこんな所で言わなくてもいいじゃない…」
そして姫様は彼が去っていった方を見やり、ため息をつきました。
太陽が沈んだ頃を見計らって、姫様のお誕生日をお祝いする舞踏会が開かれました。
招待された人々は皆綺麗に着飾り、踊りや会話を楽しんでいます。
しかしこの舞踏会をまったく楽しんでいない人もいるようです………
「……つまらん」
騎士団長はポツリとつぶやきました。
「もう、ダメだよ?そんなこといっちゃ。せっかくの舞踏会なんだから」
それに答えたのは彼の弟のアルフォンスです。
「……そんなに暇ならその辺の女の子誘って踊ってきたら?兄さん人気あるからきっと誰も断らないよ」
「ダンスは嫌いだッ!!」
「……もぉ、しょうがないなあ……」
こんなことを二人が話していると、会場の一角から歓声があがりました。
「姫様!!おめでとうございます!!!」
「おめでとうございます!!」
二人が歓声のするほうを見やると、今日のために特別に仕立てたドレスに身を包んだ姫様の姿が目に入りました。
「うわぁ。姫様、すっごく綺麗だねぇ」
「…………そうかぁ?」
そんなことを言いながらも、騎士団長の顔はほんのり赤くなっています。
そんな兄の様子に気付いたアルフォンスはからかうように言いました。
「兄さんったら素直じゃないんだから……顔、鏡で見てきたら?」
「………うるせぇ」
二人が視線を戻すと、姫様はたくさんの男性に囲まれていました。
どうやら皆ダンスの申し込みをしているようですが。肝心の姫様は困り顔です。
というより助けを求める顔、と言ったほうがいいでしょうか?
「兄さん、アレ」
「…………」
やれやれと騎士団長は立ち上がりました。
昔からあんな姫様を助けるのは彼の役割だったからです。
「………一時間くらいしたら戻る」
「了解!姫さ…ウィンリィによろしくね!!」
「……へいへい」
「姫様!ぜひ私と!!」
「いえいえ、私と!!」
無下に断ることもできず、姫様にはどうしてよいかわかりません。
するとそこへいつもより少し着飾った騎士団長が現れ、いきなりこう告げました。
「姫様、お楽しみのところ大変申し訳ないのですが、陛下がお呼びです。どうかこちらへ」
「…おばあ様が?」
不審に思いつつも、この状況から逃げ出したい姫様はこう答えました。
「…わかりました。すぐに向かいましょう」
そして騎士団長は姫様の手を取ると、あっけにとられる人々を尻目に出口に向かって歩き始めました。
しかし、何故か向かったのは陛下の部屋ではなく人気のない中庭。
たまりかねた姫様は騎士団長に問いました。
「ちょっと!!ばっちゃんが呼んでるんじゃなかったの!?」
すると騎士団長は姫様の方に振り返り答えます。
「………あんなモン、嘘に決まってんだろ」
「嘘って。な、何でそんな嘘つくのよ!!?」
「……何でってそりゃあ……その……」
言いながら騎士団長はバツが悪そうに視線を泳がします。
「エドッ!」
「……お前、困ってたじゃねぇか」
「……え?」
「だからッ!!お前が困ってたから助けてやったんだよ!!!」
やけになったように騎士団長は叫びました。
もちろん顔は真っ赤です、がこんな顔を姫様に見せるのは彼のプライドが許しません。
姫様に見えないように顔をそむけました。すると………
「エドぉ………」
そういいながら姫様は騎士団長の服のすそをつかみました。
「な、なんだよッ!?」
「………ありがと」
そしてそのままポスリと頭を彼の胸に預けたのです。
「う、ウィンリィ!?」
驚いたのは騎士団長です。まったく何がなんだかわかりません。
恥ずかしいやら緊張するやらで彼の顔はますます赤くなります。
「……あのね、お願いがあるんだけど」
「なな何だよっ!!?」
答える騎士団長の声は完璧に裏返っています。
「うん。あのね、おめでとうって言ってほしいの」
「へッ!!?」
「だからぁ、お誕生日おめでとうって言ってほしいの」
「い、言ったじゃねぇか今朝!!!」
「違うの!…アレは騎士団長としてのお祝いじゃない……」
服をつかんだまま姫様は顔を上げました。
ちょっぴりむくれ顔で騎士団長の顔を見上げます。
(おま、お前その顔はっ……は、反則だろ!!)
姫様より背が低い騎士団長は、こんなふうに見られることになれていません。
「……だから今度は幼なじみとして言ってほしいの。おめでとうって」
そういうと姫様は幼なじみの顔をまた見上げました。
なんだかんだ言っても昔から姫様のお願いには弱い騎士団長です。
わざとらしくそっぽをむきながら言いました。
「あの……えっとだな、うん………た、誕生日おめでとう、ウィンリィ」
「………」
「う、ウィンリィさん!?」
「えへへ………ありがと。すっごく、うれしい」
そういって姫様は花のように微笑みました。
それがかわいいやら照れ臭いやらで、騎士団長は
「……………おう」
と答えるのが精一杯。
こうして舞踏会の夜は更けていったのです。
身分違いと幼馴染って、萌えるよね(何が)
口調切り替えって、萌えるよね(だから何が)
いつか続きを書いてみたいネタ第一位(ホントに何が)
|