かくて戦いの鐘は鳴る








 
「エドっ!」



仕事帰り。
三日ぶりに、もはや自宅に等しい家へと続く坂道を歩いているといきなり名前を呼ばれた。
そしてその直後、どしりと背中に衝撃。結論からいうと、オレは抱きつかれたのだ。
誰に?こんなことするのは、デンとあと一人くらいしかオレは知らない。
もちろんこの場合は後者だ。
そもそも声をかけられたのだ。わからないはずが、無かった。



「………おい、ウィンリィ」

「なにー?」

「お前、何やってんだ」

「ん?あ、今仕事から帰ってきたのよ。出張整備、隣町の」



そう鮮やかに語るウィンリイの手には確かに、彼女の商売道具達が握られていた。
しかしオレが聞きたいのはそういうことじゃない。



「いや、じゃなくて」

「んー?」

「なんでお前はオレの背中に乗ってんだ」

「あー、それね。それは……」

「それは?」



首を後ろに向けて、答えを待つ。うぉ、今気づいけど顔、近っ!
異常な近距離で、ウィンリィはむふふと悪戯をする子供のような顔をオレに見せた。



「あんたの、ちっさい背中が、見えたから!」

「ちッ………!?て、てめっこのっ!」

「何よ、なんか文句あるの?」

「大有りじゃぁ!」

「うっさいわねぇ、もう。あ、そうそう」

「……まだなんかあんのかよ」

「まだ言ってなかったね。おかえり、エド」



………反則だと思う。
いつもだけどそーゆー嬉しいことをコイツは自然に言ってのける。
しかも、決まって満面の笑顔で。
だから怒るに怒れない。むしろ怒る気、失せる。
つか、逆に嬉しくなる自分が何と言うか………悲しすぎる。



「………おう」

「なによ、ただいまくらい言いなさいよー!」

「うっせ。ってかお前いつまで乗ってる気だ。アレか、オレを潰す気か?重いぞ」



本当はちっとも重くねーけど。むしろ軽すぎて逆に不安になるくらいだけど。
赤くなった頬を誤魔化すために、話題を逸らす。いや、戻す。
しかし重さは全く苦にはならないとはいえ、オレ的にヤバいのは確かだった。
そう、ヤバいのは重さなんかじゃなくて。
妙に鼻にする甘い匂いだとか、背中にさっきからあたりっぱなしのなにやら柔らかい感触、だとか(その正体は敢えて明言しない察してくれ)。



だけど。
そのビミョーなオトコゴコロなんてものに対するセンサーが極度に鈍いウィンリィがそんなことに勿論気が付くはずも無く。
オレの真意ではなく言葉の意味をそのまんま真面目に受けた彼女は、なんですってぇ〜と低い声で唸った。
それからオレの首を自身の腕で絞めてきたのだ。抱きついたその体勢のままで。


アレだ。これぞまさしく完璧なチョークスリーパー状態。
しっかも喉仏の所をピンポイントで、がっちり。




ちょ、ま、マジおま、コレッ………!










「あたしの、どこが、重いってのよ!」



お前、人にモノを聞いてる時に首を絞めるな矛盾してんぞ絶対それつーかむしろ息!息、やばいから!!



「エド、言いなさい。いったい、あたしの、どこが、重いってぇ!?」



だから無理だっつーの! おそらく青くなっていくオレの様子に構うことなく、ウィンリィはぎゃあぎゃあと騒ぎ続ける。
もちろんチョークスリーパーは完璧に決まったまま。あぁ、ちくしょう。






もう、いっそ酸欠ついでに。
このまま意地でも振り向いて酸素タップリなその口をふさいでやろうか。


















講義のノートに書いてました(ワオ!)。MEMOのSSを再録したもの。