爆裂生クリーム













「なっまクリームぅ〜」



がやがやと騒がしい店の中。高く楽しそうな声が耳に届く。
向かいに座る井上さんを見る。
彼女は小さな皿に山盛りに盛ってきた生クリームを、自分のフォークにこれまた大量にすくっているところだった。
そして、もう一つの皿に、にこにこと向き直る。
そこには山盛りてんこ盛りのケーキ達。



「ボンバーっ!!」



満面の笑顔のまま、彼女はチョコレートケーキの上に件の生クリームをだぶっと乗っけた。
そして、その白いものに埋もれたケーキをざっくりフォークで刺すと、ぱくりとかぶりつく。
おいしいーっとご機嫌に語りながら、彼女はぱくぱく食べ続ける。
先程からこれの繰り返しだ。





お昼も過ぎた買い物帰り。
井上さんに連れられて来たのは、いわゆるケーキバイキングの店だった。
さまざまなケーキが並ぶ店内は甘い匂いが立ちこめていて、全体的にファンシーな雰囲気を醸し出している。その客層は明らかに女性が多く、僕を含めて男性客は数えるほどだった。
しかも、その数少ない男はみな恋人とおぼしき女性と一緒だ。
そしてその皆が皆、大量にあるケーキではなく一緒に置かれているパスタやサラダを中心に取ってきていた。
例に漏れず、僕の皿の上にもサラダが盛られている。



「ふたたびっ!生クリームぅ〜ボンバーっ!!」



再びどころがもう何度目かも知れない。
彼女が言うところの『生クリームボンバー』を目にして、僕は胸中でひっそりと息を吐く。
なんていうか、見ているだけでお腹いっぱいというか胸焼けがしてくるというか。
思わず、ズレ落ちてきた眼鏡を手で押さえた。
彼女が甘いものを好むと言うことは知っていた。知っていたのだが。
こうして実際目にすると、いつも圧倒されてしまうのだ。
というかそもそも、『生クリームボンバー』とはなんなのだろう。
どの辺が爆発しているのだろうか。しかし彼女に聞いた所で答えはきっとこうだろう。
「ん〜。なんかボンバーっ!て感じだからっ!」
だから、あえて聞かない。それが長年の経験だ。
ふう、とため息を吐く。食欲は皆無だった。
しかしながら、向かいに座る奥さんの食欲はまだまだ尽きぬようで。
まだまだ山盛りのケーキに向き合っていた。と、不意に目が合う。
にっこりと笑われた。それに動揺して、思わず誤魔化すように口を開く。



「…お、おいしい?」

「うん!」



すると返ってきたのはまたしても満面の笑顔と、明るい声。
結局、僕は彼女のコレに弱いのだ。
知り合った高校時代から、こうして結婚した今でも、これだけには慣れない。
動揺して、顔を赤くしてしまう。
きらきらとした笑顔は、いつまでも僕には眩しすぎるのだ。



「すっごくおいしいよ!」

「そ、そう。よかった」



顔を背けてそう言う。
すると彼女は、またケーキに取り掛かり始めたようで『生クリームボンバー』と聞こえてきた。
楽しそうなそれに、今度はなんだか嬉しいようなこそばゆいような気分になる。
彼女が幸せなら、それでいいと思った。それが究極的には僕の幸福なのだから。
しかし、胸焼けは益々強くなるばかりだ。
にこにこと、今度はショートケーキを更に生クリームまみれにする井上さん。
幸せそうな彼女を見ながら、僕は家に胸焼けの薬はあったかどうかを考えていた。























拍手ログ。 雨織新婚パロ第二段。いっそシリーズ化しようかと計画中。
ネタ元はちょっぴり疲れていた管理人自身の行動だったりします。
ひびきさんリアルに相方にドン引かれたもんね!(@雷の守護者幼年期)


時代の流れにどんなに逆らおうとも二人が大好きです。
いいじゃないか振り回される雨竜と振り回す井上さん!
でもピンではシロちゃんが好きです(見えてる)