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覚醒者
頭から食べるのはちょっと罪悪感があるけれど。
せっかく温かいんだから冷めないうちにと意を決してぱくりと一口。
すると、ちょっと香ばしくてかりかりした皮と、甘すぎないあんこのコンビネーションが口一杯に広がった。
なるほど、さすがに近所で評判になってるたいやきだとツナは思う。
「どうっすか?」
「………おい、しい」
「お気に召しましたか?」
「うん。おいしいね、コレ」
もう一口食べながら答えると、こたつの向こう側の獄寺はわかりやすく嬉しそうだった。
ツナの様子に満足したように、自らもこたつの上のたいやきへと手をのばす。
彼自身も中々気に入ったようでそれまでの笑顔が曇ることはなかった。
たいやきを順調に胃袋へと収めてゆく獄寺を見て、そういえば、とツナは思い出す。
獄寺君、前、八ッ橋を持っていたことがあったなぁ。
あんまり甘いものは得意そうなイメージがなかったが、こういうのを見るとそうでもないのかもしれない。
「獄寺君ってさ」
「はいっ。なんでしょうか?」
ツナはまじまじと獄寺を見ながら、口を開いた。
「いや、結構甘いの好きなんだね」
「えっ?」
こーゆーのとかよく買ってくるから、そう言いながらツナは手にしたものを見た。
頭が無いたいやきはなんだか無残に見える。
「だから好きなのかなーって」
「いや、そーでもないっすよ」
「え?」
ツナは思わず目をしぱたかせた。
目の前にいる友達はいつも突拍子もない行動で彼を良くも悪くも驚かせてくれるが、今回もそうだったのだ。
「正直、そんな好きじゃないっす」
「え、でも、今、美味しそうに食べてたじゃん」
「あ、こうゆうのは別っす」
「はぁ?」
意味が分からなくて、思わず眉を寄せた。
しかしそんな彼をよそに、獄寺はにこにこと笑顔のままだった。
「俺、あんこって結構好きなんですよ。なんか、変な味で」
「へ、変?」
「はい。もそもそっとしてて変な味っすよねー!」
「も、もそもそっ?」
「こっちきてから初めて食ったんですけど、なんつーか、それ以来、目覚めたっていうか」
「め、目覚め………っ!?」
「はいっ。俺、あんこに目覚めたんですっ!」
そう語る獄寺の目はいわゆる曇りなき眼、とかいうアレだった。
きらきらと輝いていたのだ。
なんだそれ。ツナには意味がよく分からなかった。
いや、根本的にあんこだって甘いものじゃん、そんなことも考える。
しかし、それを口には出さなかった。
「………そーなんだ」
「はいっ!」
ツナの呆れたような言葉とは逆に、獄寺は満面の笑顔のままだった。
獄寺君の話って時々こうやってよく分からないんだよなぁ。
どうにも釈然としなかったが、まあいいかと思い直すことにする。
深く考えたところで、答えなんて出やしないのだ。
いっそ諦めに近い気持ち、といえばいいのだろうか。
こたつの上のたいやきはまだまだ大量に残っている。
後でちび達にも分けてやろう、そんなことを考えながら手にしたたいやきをじっと見た。
それはまだ少しだけ温かくて、頭がないからやっぱり惨めな姿だ。
ツナはまた、ぱくりと勢い良くかぶりついた。
獄寺が八ッ橋を通販で買ったのは、ツナが「食べてみたい」と言っていたのを聞いたからとかそんなんだと思いますが、こんな理由でも面白いんじゃないかと思って書いたもの。
だからどうした、という話。
オチが昔書いた獄ツナ子と変わらない所に管理人の引き出しの狭さが見え隠れしますね!(遠い目)
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